No.7/2004年11月5日
絵と文:香泉

語学学校のクラスを終えた頃
春の訪れと共に出発の日がやって来ました

ところがこの今、私の気持ちは揺れています
未知の世界への自由な憧れとは正反対の
ひとつ所で落ち着きたいという気持ち
結局、移動を繰り返す日々がまた始まるのに…

「あなたはいつも知らばっくれている!」
会話のレッスンを急に中断して
先生は苛立った様子でそう言うと
ぷいとそのまま席を立ってしまいました
町を発つ3日前、最後の授業でした

授業は会話を中心とした個人レッスンです
2カ月間のレッスンを通して
私達は本当に沢山の話をしてきたのです
彼が望んでいる自由への憧れが
もちろん伝わらないはずはありません
でも、彼は家族思いで子煩悩な父親でした

出発の朝、お別れを言うために学校に寄ると
先生は欠勤していました
もう町を去る時間です
3日前のあの授業が私達のさよならでした

通りには紫色の花で一杯の木々が立ち並び
幻想的なトンネルが揺れています
その中をバスはくぐり抜け、窓から窓へと
満開の紫色が雲のように流れていきます
ふと、広場の向こうに先生の姿を見つけました
彼の両手には子供達の手が握られています
私達二人が置いてきぼりにしたもの、それは
こころの底を照らす自由な気持ちだったのです
追い越して行く車の騒々しいクラクションが
見慣れた町並みを次々とかき消していきます

消え切らない別れの淋しさの傍らには
早くも見知らぬ風景に慣れていく私がいました
(続く)

香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
インデックス
No.1〈2004年5月3日〉
No.2〈2004年6月4日〉
No.3〈2004年7月4日〉
No.4〈2004年8月4日〉
No.5〈2004年9月5日〉
No.6〈2004年10月4日〉
No.7〈2004年11月5日〉
No.8〈2004年12月4日〉
No.9〈2005年1月11日〉
No.10〈2005年2月14日〉
No.11〈2005年3月14日〉
No.12〈2005年4月14日〉
No.13〈2005年5月14日〉
No.14〈2005年6月14日〉
No.15〈2005年7月14日〉
No.16〈2005年8月15日〉
No.17〈2005年9月16日〉
No.18〈2005年10月16日〉
No.19〈2005年11月16日〉
No.20〈2005年12月15日〉
No.21〈2006年1月19日〉
No.22〈2006年2月20日〉
No.23〈2006年3月21日〉
No.24〈2006年4月24日〉
No.25〈2006年5月25日〉
No.26〈2006年6月29日〉
No.27〈2006年7月31日〉
No.28〈2006年9月4日〉
No.29〈2006年10月4日〉
No.30〈2006年11月7日〉
No.31〈2006年12月8日〉
No.32〈2007年1月11日〉
No.33〈2007年2月15日〉
No.34〈2007年3月19日〉
No.35〈2007年4月20日〉
No.36〈2007年5月28日〉
No.37〈2007年6月28日〉
No.38〈2007年8月2日〉
No.39〈2007年9月5日〉
No.40〈2007年10月11日〉
No.41〈2007年11月30日〉
No.42〈2008年1月17日〉
No.43〈2008年2月21日〉
No.44〈2008年3月21日〉
No.45〈2008年4月23日〉
No.46〈2008年5月24日〉
No.47〈2008年7月16日〉

トップページに戻る。