No.5/2004年9月5日
絵と文:香泉

無性に緑が見たくなりました
強い緑が私の血になるような気がしたのです

このあたりのジャングルは遺跡の宝庫でした
艶やかな下草の間から顔を覗かせている岩には
明らかに人の手による形が残されています
石を組み築かれた遺跡−それは遥か昔
黒髪と日焼けした肌を持つ人々が
磔された神様のことなどまだ知らずに
星や太陽の近くで生きていた時代の
智慧のステージだったのかもしれません

どこまでも折り重なった緑の向こうに
真っ白な壁が見えてきました
でもそれは、ごつごつとした石の塔でした
真下から見上げると
がっちりした石組みが崖のように聳え立ち
頭上の太陽に照らされています
暑さと高さでくらくらする頭をどうにか支え
摩耗した石の階段を一段、また一段と少しづつ
その頂を目指しました
「太陽の道を登っている!」
ふと、そんな考えが閃いたちょうどその時
南風が吹き抜け、私は頂上に立っていました
燕が、勇ましく目の前をよぎっていきます

ここはすばらしい眺めでした
足元のずっと下方では緑の海がぐるりと広がり
あたかも世界が私のもとに集まって来るように
風は全ての木々を揺らしうねらせ
樹海は次々と美しい踊りを披露しています
頭をもたげてはひれ伏す緑の大饗宴
その中心が私でした

…と、また燕が私の前をよぎっていきました
切り立つ崖の横を滑りでもしているかのように
軽やかに旋回しては風に乗る小さな燕の
その姿が自由でした
世界の中心など得るまでもなく
ただ、そのままが全てでした (続く)

香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
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