No.4/2004年8月4日
絵と文:香泉

どこに行っても血だらけの神様がいます
その横では、まるで娘のような神様のお母様が
決して消えることのない涙を流しています

今日も寺院の中では
人形達によって大いなる苦悩が演じられ
人間達は頭を深く垂れ跪き
敬虔な舞台にライトが当たっています

いつもと同じ光景でした
私もまたいつもと同じように
暗い舞台の裾に立ち、これを見ていました
神様も聖母様もまるでできそこないの人形で
そんなものにどうして跪けるのか不思議でした
争いと病、そして死があふれているこの世界で
血と涙を消し去ることなんてできやしないのに
…そう言ってみたくもなりました

朝刊の一面に飾られる血みどろの死体写真
昼日中でさえふと感じる薄ら寒い気配
こうした薄気味悪さや危うさなど
当たり前のように流されていく土地柄です
私だってじき慣れてしまうのかもしれません
それでも、ひとりで歩く淋しさや心細さは
ときに忘れることがあったとしても
消えはしないのだと気づいたりもするのでした

ツンとする匂いが鼻をつきました
見ると、垢まみれの老婆が四つん這いになり
聖母様の足にキスをしているところです
うずくまるその後ろ姿には
埃と垢で固めたような灰色の素足が並ぶきりで
色の剥げかけた人形が老婆の上で揺れています

「お祈り下さいますか?血と涙のためならば」

それは突然の、降って湧いたような声でした
老婆は先程と同様に静かに祈り続けています
何一つ変わったことなど起きていない
敬虔な舞台があるばかりでした (続く)

香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
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