No.38/2007年8月2日
絵と文:香泉

私は最果ての小さな空港に来ていました
七日間、旅を共にした友人の見送りです
名はマリア、彼女は国に帰れば先生でした
移民や難民の子供達に言葉を教えているのです

「あなたのこと大好きよ!」

つい先程のマリアらしい率直なさよならが
私達の旅を鮮やかに蘇らせてくれます
土産物屋の音楽や場内アナウンスが流れるなか
私は銀色の機体に並ぶ小さな窓に目を凝らし
見えるはずもない彼女の姿を探していました

私達二人は毎日本当によく歩いていました
原野では、小鳥や小動物を見つけて息をひそめ
動物の骨や糞を拾えばその正体に思いを巡らし
奇妙な形のキノコを恐る恐るなめてみたりと…
空腹になれば風を遮る岩陰にしゃがみ込み
冷たいサンドイッチを分け合っていた私達も
町に戻ればチョコレートやケーキを楽しみ
夜には吹きすさぶ風の音を聞いていました
時には切ない話が出ることもありましたが
朝ともなればいそいそと台所に向かい
二人揃ってココアの準備をしたものです
自然の力が強い地域でしたから
お互い急変する天候や強風には疲れを覚え
短すぎる夜の為に寝不足にもなっていました
それでも生まれ育った国も言葉も異なる私達が
共に過ごしたこの七日間は不思議と明るく
子供時代に共有したあの気持ち良さを
ふと思い出させてくれたりもするのでした

離陸してゆく機体はずっしりと重たそうです
どうしてあんな物が空を飛ぶのでしょうか
ひょっとするとマリアは故郷の地に降りた瞬間
ホッとして笑みを浮かべるのかもしれません
まるで重さを消してでもいくように
早々と空に向かって飛び込んでいった飛行機は
雑多な想いの詰まったこの地からどんどん離れ
今、軽やかに日を浴びています (続く)

香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
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