No.37/2007年6月28日
絵と文:香泉

また10kmも歩くのか…とため息を漏らしたのは
先史時代の壁画を見に行った帰りのことでした
湖畔の道は途方もなく続くばかりです
私はうんざりした気分で水を飲んでいましたが
脇からぬっと突き出る湿った鼻にギョッとして
見れば大きな、けれど幼さを残した犬でした
一体全体いつからここにいたのでしょうか?!

犬はじゃれつきながらゆさゆさついて来ました
きっと飼い犬だと思い帰るよう促してみますが
楽しそうに遊びやっぱりついて来てしまいます
癖っ毛の中から覗かせている黒い目が愛らしく
私もついつい撫でては話しかけてしまうのです
実際、犬と歩く旅は楽しくて仕方がありません
こんなときは湖畔の景色も次々に移り変わり
今では原っぱの向こうに町だって見えています
私が近道をしようと草の中に分け入っていくと
犬は鼻をくんくんさせて中々足を出しません
それでも私の呼ぶ声に応えようと
戸惑いながらもついて来る犬でした
けれどこの戸惑いどおり原っぱは突然に途切れ
露出した土の上に現れたのはゴミの山でした
私達がゴミを蹴り歩いている間にちらちらと
様子を窺う野良犬を見かけてはまた別のが現れ
結局ばらばらと、20頭程が集まって来ました
よくよく犬に好かれる一日でしょうか…しかも
私と後ろの連れが気になるらしい野良犬達は
困ったことに唸り声まで漏らしています
どうしたものかと私は暫し連れを待ち
「行くよ」と努めて平静に声をかけたのですが
なんと、この連れは私の真横にスッとつき従い
散歩の途中といった様子で澄ましています
お陰で私達の歩みは実にさりげなく進んでゆき
ゴミ捨て場の犬達との距離をも徐々に広げて
前方に佇む美しい町に近づいて行ったのでした

さて、いつの間にはぐれてしまったのか
振り返るとあの犬はもういなくなっていました
ひょっとすると湖畔で帰り道を眺めていたのは
私だけではなかったのかもれません (続く)

香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
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