No.34/2007年3月19日
絵と文:香泉

ここのところ私は風と埃に悩まされていました
別に砂漠の真ん中にいる訳ではないのです
原っぱや木もあれば家も建つ村外れの道端で
やって来るはずのバスを待っているだけでした
でも、真っ昼間だというのに通りに人気は無く
風と砂塵ばかりが通り過ぎていきます
いくら昼寝の時間とは言え
誰も彼もが白いカーテンの内側に閉じこもり
こんなふうに時を止めてしまうのは奇妙でした

それにしても、バスはどうしたのでしょうか?
かれこれ1時間以上も遠くの砂埃に目を凝らし
近づいて来る車の音に耳を澄ましているのです
けれど、どれもこれもが風と私の競作でした
風上に背を向けじっとしていると
原っぱの木々に砂塵が押し寄せていきます
エンジン音を耳にして半信半疑で振り返れば
それは砂埃を盛大に上げた軽トラックでした
当てにならないバスを待つよりかはと思い立ち
腕を振り親指を上げてのヒッチハイクです
そしてその数秒後、私は砂混じりの涙を流し
再び風上に背を向けじっとしていたのでした
あの木々の向こうに見えるカーテンの内側では
どんなに緩やかな時が流れていることでしょう
こうした暖かい営みから遠く離れて
私はどうして旅なんかしているのでしょうか?

そうして馬に乗った男が通りかかったとき
風が染み込んだような風貌をしたその男に
私は思わず問いかけていたのです
バスは来るのだろうかと…
男は馬から下り「大抵はな」と答えるだけです
原っぱに向かって歩き出した男の背中に
バスは来ない日もあるのかと投げかけてみれば
「まあじき来るさ」と、二の句が告げません
私は男と馬の後ろ姿を見送るだけでしたが
ふいにカーテンの開いた窓辺に人の姿を見つけ
遠くに現れた小さなバスにも気づいたのです
それは止まっていた時計が再び動き始めた時の
あの明快なリズムが溢れ出す瞬間でした(続く)

香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
インデックス
No.1〈2004年5月3日〉
No.2〈2004年6月4日〉
No.3〈2004年7月4日〉
No.4〈2004年8月4日〉
No.5〈2004年9月5日〉
No.6〈2004年10月4日〉
No.7〈2004年11月5日〉
No.8〈2004年12月4日〉
No.9〈2005年1月11日〉
No.10〈2005年2月14日〉
No.11〈2005年3月14日〉
No.12〈2005年4月14日〉
No.13〈2005年5月14日〉
No.14〈2005年6月14日〉
No.15〈2005年7月14日〉
No.16〈2005年8月15日〉
No.17〈2005年9月16日〉
No.18〈2005年10月16日〉
No.19〈2005年11月16日〉
No.20〈2005年12月15日〉
No.21〈2006年1月19日〉
No.22〈2006年2月20日〉
No.23〈2006年3月21日〉
No.24〈2006年4月24日〉
No.25〈2006年5月25日〉
No.26〈2006年6月29日〉
No.27〈2006年7月31日〉
No.28〈2006年9月4日〉
No.29〈2006年10月4日〉
No.30〈2006年11月7日〉
No.31〈2006年12月8日〉
No.32〈2007年1月11日〉
No.33〈2007年2月15日〉
No.34〈2007年3月19日〉
No.35〈2007年4月20日〉
No.36〈2007年5月28日〉
No.37〈2007年6月28日〉
No.38〈2007年8月2日〉
No.39〈2007年9月5日〉
No.40〈2007年10月11日〉
No.41〈2007年11月30日〉
No.42〈2008年1月17日〉
No.43〈2008年2月21日〉
No.44〈2008年3月21日〉
No.45〈2008年4月23日〉
No.46〈2008年5月24日〉
No.47〈2008年7月16日〉

トップページに戻る。