No.25/2006年5月25日
絵と文:香泉

限りなく空に近い大きな湖での島巡りは
眩しい太陽に照らされた青い世界のただ中を
ただひたすら小さなボートで進む旅でした

まず現れたのは大小様々な浮き島です
葦を積み重ねて造られた島のようですから
体重を乗せると足元がふんわり沈みます
私は柔らかな地面を一足一足歩いてみました
小さな葦の家の前では葦の小舟が作られ
葦の畑には僅かばかりの緑が風に戦いでいます
地面の切れ端を食べている豚がいますが
島そのものが餌なのでしょうか−
そして湖上を更に進み次に現れたのは岩でした
猫科の大形獣、ピューマの形をした大岩です
突き出した細長い尾の先に飛び乗った私は
腰から腹へ、腹から肩へと順々に飛び移り
小高く横に張った額の上に立ってみました
湖は磨き上げられた珠のように艶やかで
眺めれば眺める程輝きを増すようでした
このあと太陽は瞬く間にその傾きを変えてゆき
私はようやく新たな島に辿り着いたのです
さて、石門をくぐると奇麗な敷石の並ぶ広場で
女が立ったまま人形を操るように糸を寄り
その横に腰掛けた男が編み物に勤しんでいます
皆ナイトキャップのような黒い三角帽を被り
世間話でもしているのか静かに笑っています
そうして太陽が沈むと人々は家族のもとに帰り
私は寝袋の中で耳を澄ましていました
湖のどこかで獣が吼えているようでしたから…

明くる朝、獣の消えた湖は清々しく
行く手にはこんもりと茂る島が見えてきました
岸に着くと楽しそうに子供達が集まって来ます
私のポケットにチョコレートを見つけ
頂戴、頂戴と言いながら手を差し出しています
困った私は空腹な様子を見せるしかありません
「あんたはまた買えばいいじゃない!」
きつい言葉が飛んできました
今日も湖は艶やかですが、ところで島の子供も
あの獣の声を聞いているのでしょうか− (続く)

香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
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