No.22/2006年2月20日
絵と文:香泉

子供はべったりした靴墨を指に取ると
すっかり草臥れてしまった私の靴にそれを付け
そしてまた付けては伸ばしてふいに顔を上げ
汚れた手で頬を拭いながらニッと笑っています
「さあさあ、僕の芸術をご覧あれ」

歳は七つぐらいでしょうか−?
広場で靴磨きをしている男の子です
ここには他にも仲間の子供達がいるようで
商売道具の木箱をカタカタと脇にぶら下げ
通りがかりの大人に近付き声を掛けています
お客が見つかれば直ぐさま木箱を地面に置き
そこに客が片足を乗せたらせっせと靴磨きです
ところが私の靴先には目鼻らしきものが描かれ
それでなくても草臥れた靴ですから
どうしようもなく困った顔付きになっています
もう少し元気な靴がいいと注文する私の為に
片方だけピカピカに磨いてくれる子供でした
お客は沢山いるかと尋ねてみれば
「多かったり少なかったり
 でもチップを貰えた日は最高なんだ」

−さて、小さな芸術家と別れバスに乗った私は
ここでも靴磨きの子供に声を掛けられました
片方だけ磨いてもらおうと木箱に足を乗せると
子供は目鼻の描かれた靴を見出したその瞬間
くりくりっと輝く目で私を見上げのです…が
すぐに靴墨を取り出すとそれを付けては伸ばし
職人的な手際の良さで滑るようにブラシを掛け
困り顔の目鼻は跡形もなく消えてしまいました
子供の指は素早くポッケから布切れを取り出し
これを細長く畳んでつま先にふんわり乗せると
布の両端をそれぞれ左右の手でしっかり握り
形に添わせてシュッシュと磨き上げていきます
彼は仕事ぶりの良い職人なのです

一段落した様子で乗降口に腰を下ろした子供は
今日の稼ぎを確認しているのか指先で数を数え
「よし!」というように頷くと車窓を仰ぎ
気持ち良さそうに空を眺めていました (続く)

香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
インデックス
No.1〈2004年5月3日〉
No.2〈2004年6月4日〉
No.3〈2004年7月4日〉
No.4〈2004年8月4日〉
No.5〈2004年9月5日〉
No.6〈2004年10月4日〉
No.7〈2004年11月5日〉
No.8〈2004年12月4日〉
No.9〈2005年1月11日〉
No.10〈2005年2月14日〉
No.11〈2005年3月14日〉
No.12〈2005年4月14日〉
No.13〈2005年5月14日〉
No.14〈2005年6月14日〉
No.15〈2005年7月14日〉
No.16〈2005年8月15日〉
No.17〈2005年9月16日〉
No.18〈2005年10月16日〉
No.19〈2005年11月16日〉
No.20〈2005年12月15日〉
No.21〈2006年1月19日〉
No.22〈2006年2月20日〉
No.23〈2006年3月21日〉
No.24〈2006年4月24日〉
No.25〈2006年5月25日〉
No.26〈2006年6月29日〉
No.27〈2006年7月31日〉
No.28〈2006年9月4日〉
No.29〈2006年10月4日〉
No.30〈2006年11月7日〉
No.31〈2006年12月8日〉
No.32〈2007年1月11日〉
No.33〈2007年2月15日〉
No.34〈2007年3月19日〉
No.35〈2007年4月20日〉
No.36〈2007年5月28日〉
No.37〈2007年6月28日〉
No.38〈2007年8月2日〉
No.39〈2007年9月5日〉
No.40〈2007年10月11日〉
No.41〈2007年11月30日〉
No.42〈2008年1月17日〉
No.43〈2008年2月21日〉
No.44〈2008年3月21日〉
No.45〈2008年4月23日〉
No.46〈2008年5月24日〉
No.47〈2008年7月16日〉

トップページに戻る。