No.21/2006年1月19日
絵と文:香泉

いたずらにばら蒔かれたような巨大な地上絵
それを追う軽飛行機に乗り込んだ私は
全てを蹴散らしてしまうけたたましい振動に
今までに無い爽快感を覚えていました
やおら重心が傾き地平線が右に回り始めると
機体の前方から空が消え地上が近づいて来ます
砂礫の平原には刻まれたラインが幾筋も現れ
それが奇妙な鳥の形と識別されたその時既に
白いラインに括られた鳥は素早く左に回転し
瞬く間に後方へと飛び去っていきました

砂利っぽい地上が次第に傾きを増していくと
再び空の明るさが視界を占領し始めています
平原を縁取る黒いでこぼこの山並みに近づき
ふいにエンジン音が遠のいたまさにこの瞬間
私はふわりと宙に浮いたのです
気が付けば何か大きな手の上にでも乗せて貰い
空の只中を飛んでいましたが
どこを見ても誰の顔もどんな姿もありません
眼下では暗色の地上に微細な光が埋め尽くされ
散在する地上絵のラインは青白く浮き上がり
ただただキラキラと輝くばかりです

 「私の落書きはなかなかのものだろう?」

温かく豪快に響く声でしたが
それが誰なのか気にもせずに私は笑顔で答え
全てが自然で全てがひと繋がりでした
どの地上絵ももはや自在な光のラインとなり
交差しては離れて新たな形を創り続けています

「右前方、宇宙飛行士だ!」
操縦士のがなり声にハッとした私は
再びエンジンの振動に包まれていました
右前方には黒い砂礫に覆われた山肌が現れ
丸い目をした人間のような姿が描かれています
「あれは神様の落書きなんでしょう?」
私も大声で話しかけると
「ああ、爽快な落書きだ」
操縦士は楽しそうに答えてくれました (続く)

香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
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