No.20/2005年12月15日
絵と文:香泉

寒々しくさえない天気の昼間近
バスの終着駅に降りてみると道は掘り返され
所々に掘り出された土が盛られていました
何か工事でもしているのでしょうが
穴の中で屈んでいる人足達の動きはとても鈍く
道が元に戻るとは到底思えないのでした

山脈を縦断するハイウェイが整備される以前
この町は貨物列車の折り返し地点として栄え
人も物も全てが動いていたはずでした
列車が廃止された今となっては人影も疎らで
錆び付いた線路が道路の中に覗けるばかりです

宿屋の看板をようやく見つけ中に入ってみると
最初に案内された個室には辛気臭い空気が漂い
次に案内された相部屋には昼も近いというのに
ヒッピー風のカップルが仲良く寝ていました
いずれを選んでも窓無しの共同水シャワーです
乗り気のしない私の表情に気を悪くしたのか
宿の主人からは他をあたってくれと追い出され
私自身もこんな寂びれた町に留まる理由は無く
結局バスの発着場に戻ることにしたのです

先ほどの穴の横では人足達が休んでいます
皆から一人だけ離れて休んでいる先住民の青年
見れば、彼の顔には見覚えがありました

もう2カ月以上も前のことでしょうか
滞在中の宿屋によく来ていた青年で
宿屋の息子の友達として紹介をされ
話しをしたことがあったのです
あの辺り一帯で暮らす部族は商才に長け
店を持つ者も多かったので先住民の力は強く
あそこにいる限りは誇り高い男として
いつでも堂々としていられたことでしょう

どこを見ているのか全く知らぬふりの彼の身に
その後何が起こったのか知る由もありません
ただ、青年は部族の男が持つ強い眼差しの底に
暗い穴を映しているだけでした  (続く)

香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
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