No.17/2005年9月16日
絵と文:香泉

灰色の四角い敷石がきっちりと並ぶ広場で
私は、東西に伸びる線の上を歩いていました
海からずっと高い所に標された0゜0′0″の赤い帯
高峰と空ばかりが望める赤道です
北半球と南半球−さて
どちら側と向き合ってもやはり空は真っ青です
なぜ北と南が引っ繰り返らないのか奇妙に思え
磁石を持ったままひと回転してみるものの
どうしたって天はこちらだとでも言うように
針は北を目指して私の向きにはお構い無しです
普段何げなく使っている基準の絶対さを
小さな磁石が何とも律義に示しています
そして、私が目指しているのは南でした

南下する旅に出ようと思い立ったのは
数年前に読んだ一つの物語りが切っ掛けでした
それは、永い時を越えて常に繰り返されてきた
とある一族の旅立ちの物語りです
家族単位で小舟を操るこの一族は
食料を獲る為、あるいは病や敵から逃れる為に
幾世代にも渡り余儀なくされた移動の果てに
忘れられた人間として陸地の覇者達から蔑まれ
ときに見世物として晒されるように脚光を浴び
結局、消えて逝く運命でした
そんな彼らの長い旅、それが南下だったのです

赤道の広場から小高い山の頂に着いた頃には
先程までの空は姿を隠し霞がかかっていました
柔らかな土の上を白い霧が滑り始め
次第次第に雲の中に包まれていくようです
景色も地面も全てがおぼろに流れていくなか
方位や天と地の区別はもうどうでもよく
ただただこの曖昧さと手を結んでしまい
このままじっとしていたくなるのでした
誰しもどうせいつかは消えて逝くのだから…と
しかし、そんな思いが続くはずも無いのです
赤道上の高山帯、乾期の薄い雲は切れ易く
透き間から差し込む空の明るさもまた
すぐにその力を取り戻してしまうから
「さあ、行こう」前進を促す青空です (続く)

香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
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