No.15/2005年7月14日
絵と文:香泉

山間のこじんまりとした町に着いたのは
白んだ空にまだ日が昇らない時分でした
電灯がついたままのバスの発着場に
小さな人だかりができています
朝を待つ人達がコーヒーを買っているようです

「温かいコーヒーだよ、温かいコーヒー…」

よく通る少年の声にひかれて人だかりを覗くと
香ばしい朝の空気が溢れています
10歳ぐらいでしょうか
紙コップの入った箱を首からぶら下げた少年は
プラスチックの大きなコーヒーポットを抱え
呼び込みをしながら器用にコーヒーを注いでは
コップをお客に手渡しお金を受け取っています
人懐っこい眼をした少年です
おいしいかと尋ねてみれば
コーヒーの入った大きなポットを掲げて
勿論さと言うように誇らしげに頷いています

この国は世界でも有数のコーヒー豆の産地です
にもかかわらず良質な豆は輸出されてしまい
美味しいコーヒーなど期待のできない現実です
ただ、不条理はあっても自慢は自慢なのです

少年から受け取った紙コップの中身を見れば
底が透けるほどに薄いコーヒーでしたが、でも
無邪気な甘味がありがたく、そして温かでした

「おいしいかい?」 「とってもおいしい」

ブンッ!
ふいに強い羽音がしました
少年が植え込のあたりを指差してくれます
大きな花のところ、ハチドリです
羽ばたいているはずの翼はまるで見えず
青い羽色が明るく輝くばかりです
もうすっかり朝になっています

「この町好きかい?」 「うん!」 (続く)


香泉
kosen.z.hitomi@gmail.com
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