Monthly Essay オーイ! 絵と文:香泉

〜その1〜
2009年9月11日



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香泉の旅物語「ゼロの細道」

chapter-1 惑星の輝き
chapter-2 青い故郷の風
chapter-3 深海の闇より
chapter-4 親愛なる君へ
chapter-5 エヴァーラスト
chapter-6 スピリッツ


天道様、あなた様は地上に暮らす私達一人一人のことをあまねく覚えていらっしゃるのでしょうか? たとえそうでなかったとしても私達がお天道様を忘れてしまえる訳では無く、だからこそあなた様のお力が恐ろしくもあるのかもしれません。しかも私にとってお天道様はお師匠様のようなもの。お天道様に憧れ、あの明るさと高みに少しでも近づく為、私のイメージするところはまさしく切磋琢磨。ところが日々の私ときたら、だらだらと時を過ごし惰眠を貪る体たらく。にもかかわらずお天道様からの様々な気づきのチャンスは尽きることなく、さらにそれはいつも同じひとつの呼びかけとなり戻ってくるのです。「オーイ、生きてるかー?」と。

くなった父の故郷を訪れたときもそうでした。田舎の単線列車は中も外も長閑で、私は時折押し寄せて来る草の匂いを吸い込み、車窓の向こうに覗くギザギザした山の稜線を眺めていました。子供の頃、「恐竜の背中」と自分勝手に呼んでいたあの山の近く、そこが父の故郷でした。緑の小山と畑が流れていきます。家も車も流れ、川を渡り畑が広がり、そうして現れた窓一杯の山! ドーン、ドーン、ドーン、私はまるで大太鼓の中にでもいるようです。よく見知っていたはずの山がこんなに強烈な躍動感を響かせていたなんて! ──まさしく山は生きていました。

参りをすませた帰り、「恐竜の背中」はすっかり鎮まっていました。ギザギザの稜線が夕空に滲んでいくなか、その下方に灯る一点の光だけが次第に明るさを増しています。それはホームから伸びる二本のレールと結び付き、短い旅の終わりを予告する列車のライトでした。

天道様、あのときホームに立っていた私は、永い永い時間に生きているもうひとりの誰か、たぶんそうだったように思います。もちろん我が身には違いないのですが生身の私とは違う透明人間──、あれが魂というものなのでしょうか?

◆生きてのち 魂はどこに 逝くのかと 山を眺める 山が近づく


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