「やれやれ今日ももう終わりか、ああ疲れた。契約、やっぱりとれなかったけど、帰ったら部長の奴また怒るだろうなあ。しょうがないよ、何たってオレ、ついこの間まで総務にいたんだもの。いきなり営業にまわす方が悪いんだ。
ちぇっ、リストラ策だかなんだか知らないが、これって嫌がらせの一種だよなあ。もっとも、パソコンをいじれないオレにも、責任はあるんだけど。かといって、いまさらこの年で勉強する気にもなれないしさ。あ〜あ、あんなものいったい誰が発明したんだ?」




「ところで、マンションのローンがあと15年か。まだまだ先が長いな。日暮れて道遠しだね、トホホ。
だけど、この通りを歩いてる他のサラリーマンも、みんな似たようなローンを抱えているんだろうなあ。男はつらいよ、ホントに。なんだかオレ、このままフーテンの寅さんみたいに、旅に出たくなっちゃったよ」




「とかなんとか言って、気が付いたらもう家の近くまで来ちゃったな。やっぱりオレは忠実な伝書バトか、ハァーやれやれ。
とは言えこのまま家に帰っても、女房が飯の支度をして待ってるわけじゃなし、娘にはクサイと言われるし。結局、居場所がないんだね。こうなったら、いつもの屋台で一杯やって行くしかないか。飲み仲間と、グチの一つも言い合ってさ。・・・なんだかオレ、毎晩同じことをしているような気がするなあ」