「先生、また患者さんが運ばれてきましたよ」
「今度はなんだい。なに、子供がプロレスごっこで、タンスの角に頭をぶつけた?」
「それから、急性アルコール中毒の女子大生も」
「最近の女の子は、コンパなんかでもよく飲むからなあ」
「もう一人、スケボーに追突されたおじいさんが・・・」
「やれやれ、最近の若者はお年寄りに気を配るということを、知らないのかね」




「だけど、毎日いろんな患者さんが運ばれて来ますねえ、先生」
「町の救急病院もたいへんだよ」
「子供の発熱から交通事故のけが人まで、診察や治療で休むひまもない、先生のお体のほうが心配ですわ」
「ありがとう。でも、うちみたいな小さな病院が、少しでも社会のお役に立てばと思ってね」




「ほら、昨日運ばれてきたおばあさんが、すっかり元気になってお帰りですよ」
「うん、急性胃腸炎で苦しがってた患者さんだね。よかった」
「あの笑顔が、私たちのいちばんの励みになりますね」
「そうだよ、わしらも自然に笑顔になるな。この喜びを忘れないようにしなくちゃ」
「ところで先生、さきほどご自宅の奥様からお電話がありました」
「そう? 何だろうな」
「今日は結婚記念日だから、お帰りを待ってると・・・。あら先生、急に顔色が青くなって、どうなさったんですか?」